バナナ事件
こんにちは! 吉田鈴香(Suzuka Yoshida)です。
これはブラックユーモアです。
でも、ブラックユーモアではありません。
これは真実の告白です。
小学生になる前のこと。
冬が近いある晩、父が単身赴任先から大きなバナナひと房をお土産に帰ってきました。
寝る前だからと、1本をナイフで半分に切ったものをもらい、ブツクサ言うと「なら、食べるな」と一喝され、しぶしぶ食べました。
私はバナナが食べたくて仕方ありませんでした。
うむむーバナナ・・・
うーん、バナナ~
うお―お、バナナ!
私は、家中の電気が消され、家族が寝静まるのを待ちました。
自分の気配を殺しました。
(寝たふりをしたんですね)
柱時計がたくさん鳴ったとき。
(12時でしょう)
決行のときだ!と起き上がりました。
バナナの在り処は分かっている。
ここだ!
棚を開けると、紙包みにくるまれた大きな房が目の前にありました。
それは、自分の手の中にだけある。
ほかの人はこれに触ることができない。
バナナってこんなに重いんだ。
(これが「独占」という概念を経験した初めての事案だったような)
1本目、口に入れました。(ひと口で3分の1くらいほおばったような気がします)すんなり終わってしまいました。
2本目、ガブリといきました。
3本目、何も考えず剥いて食べました。
3本食べても前と変わらぬ大きさで曲線を描くバナナ。
なんと、心強いことか。
バナナ、エラいぞ。
房の重さを膝と手のひらで感じ取り、さらに口に入れることを決心しました。
4本目、5本目・・・
その後はもう何本食べたか数えやしません。
あ--食べた、と満足したとき、哀れ、バナナの房は房ではなくなり、2本になっていました。
さて、2本だけあったら、あの怖いおかあちゃんは誰かがこれを食べた、と思うだろう。
いっそ全部なくなっていたら、どこかに誰かがバナナを持っていったのだ、と思うだろう。
(知恵が働きます)
誰かがバナナを移した、ということにすればいいのだ。
ぜぇんぶ、食べちゃえ!!
・・・ということで。
最後の1本は口の中に押し込むようにしてしまいこみ、ひと房すっかり姿を消しました。
あれま、皮が残った。
この皮、どうしよう。
居間のゴミ箱に入れたら、どこかに誰かが移したというシナリオがウソになる。
裏口の大きなゴミ箱に入れてしまえば、しばらく誰も気がつかない。
ゴミ回収車が来る日まで家中のゴミを放り込んである大きなゴミ箱に、それらをポイ~っ♪とし、気持ちよく床にもぐりこみました。
――翌朝。
「すずか、すずか、起きなさい」
やわらかい、女性らしい声で目が覚めました。
誰の声だろう?
少し目を明けると母でした。
? ? ?
「口をあけてごらん、虫歯の検査をするから」
あーん
「ぅわああっ! 虫歯だ!」
ひえっ(と飛び起きた私)
「バナナだ、バナナのにおいがするぅ。バナナの菌が虫歯を作ったんだ」(のけぞる母)
ぇへえ?
「バナナ、全部食べたね。アレ、ぜえんぶ、食べたんだね」(顔を近づけてくる母)
あぁぁうぅうう・・・あたしじゃないよ、
「裏口に皮が捨ててあった。そんな知恵が働くのはお前しかいない」
ン?(そうだ、あたしは頭がいいのかもしれないと一瞬返答をためらったので、母は私が認めたと判断した)
「よくもまあ、食べられたもんだ。あーんなに、なんてコだろう」
かくして、私は、いつ何をしでかすか分からぬコ、という烙印を親から押されてしまいました。
今思うと、当たっていますね、その所見。ただし、食べ物に対してだけの執着心ですが。
日本ではバナナがとれず、関税がかけられ、バナナが高級品、珍品だった時代のお話です。
いっそ、ブラックユーモアにしてしまいたいホントのお話でした。
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