8月7日から始まった、グルジアとロシアの戦争に関連して、20日に急遽、駐日大使が笹川平和財団において講演会を開いた。ポイントを下記のように集約した。
・ 国際法を犯して主権国家グルジアの領土の保全と国境線の維持を破ったのは全くロシアであり、新しい多極化世界の最強国になろうとしている。
・ 民主主義と自由を信ずるNATOへの挑戦だ。われわれの軍事行動はそれに対する反応だ。
・ ロシアは、NATOがどれだけ耐えられるか、テストをしている。
・ ロシアはカスピ海の資源を欧州に流すグルジアの重要性をわかっている。20~30億ドルのインフラ投資をすべて破壊し、またグルジアの軍事命脈を絶とうとしている。
・ 2000年初めに、南オセチアの民族、オセット人の3分の2である50万人はロシアによってすでに追い出されており、本来の二つの民族はそこにいない。残った住民3万人にロシアはロシアのパスポートを発行。その"ロシア国民"を守るための進軍だと、ロシアは説明している。ロシア国民になりたいという民意自体がロシアによって仕組まれたものだ。
・ グルジアは西側と東側のダムである。
・ ロシアとは16年間交渉してきた。ロシアのグルジアの村落攻撃は今年3月から始まっていた。
・ アブハジアにOSCEが入っているが、ロシアも同様に軍事モニターを派遣してきている。双方の軍事監視団につながりはない。
・ コソボの独立は民族独自の意思を反映しているが、南オセチアはロシアの作戦によるロシア併合である。セルビアが親西側でありOSCEの軍事監視員も平和維持軍も受け入れていた。グルジアとコソボとは全く違う。
・ Red CrossもUNHCRも入れないため被害状況は不明だが、おそらく12万人の国内避難民と数百名の死者が出ている。
・ ロシアの第58軍が、義勇軍(paramilitary)を支援する形で侵略している。
・ ロシアはグルジアとの対話を一切拒否。OSCE、UN事務総長の提案を無視してきた。交渉には時間がかかるだろう。
・ グルジアはNATO加盟を許されるだろう。
・ ロシアの次の狙いはウクライナ。
・ グルジアによるツヒンバリ攻撃が戦火を拡大したと(記者が)言うのは、後知恵で思えば、そうかもしれないが。
大使は筋の通った話をしている。国際法に照らして真偽を述べていること、民意の反映のからくりに言及していること、に正論を感じさせる。NATO諸国は動くだろう。大使は現大統領のスポークスマンをされた人だけあり、ゆるぎない声で正論を貫く。
さて、いつものことながら、日本では「解説」あって「主張」はない。ロシア関係でぬきんでて著名な某ジャーナリストは、この講演会に際しても解説者として前に出ることを望まず、一ジャーナリストの立場にあえてこだわったと聞いた。旗色鮮明にすることを望まないのは、そのほうが今後も情報を取りやすいからなのだと推察するが、この有名人が言わないとすると、誰がロシアを批判するのだろう?いつロシアを批判するのだろう?何のためにジャーナリストをしているのだろう?
取材をするに当たり、旗色鮮明にしたほうがむしろ情報をとりやすいことがある。相手の痛いことを衝く内容、誰も気がつかなかった隙間を衝く内容がそれである。すると、相手は反論せざるを得なくなり、取材者を懐に入れようかという動機に駆られる。今回の戦争での立場表明をしないのは、この場合に相当しないと判断したのだろうか。
日本の一部有識者が、グルジアの現政権がアメリカの支援を得て樹立されたとか、西側の支援を当てにして生きているとか、NGOが影にいるとか、「ロシアもグルジアもどっちもどっちだ」みたいなことを言う人までいる。だが、そういう話は庶民レベルでは面白いが外交をつかさどる立場にあるものは歯牙にもかけない話だ。出自を問わず、正当な手続きで選ばれた政府を政府と認めるのが国際社会のルールだ。こうした記事が「主張」として出てくることは、読者の目を曇らせるようで、一方怖い気がするのである。
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